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以前の記事「会社が帰属意識を求めてくることの滑稽さについて|仕事はお金を得るための手段」で会社が帰属意識を求めてくるのは滑稽であることを指摘しています。
こういった現象のそもそもの原因は正社員の終身雇用制にあったのですが、現在では見るも無残に崩壊しています。
ですが、多くの大企業では20年ほど前に入社したベテラン社員のためのポストを探すことに苦労をしています。また、この制度を維持しようと思ったら若年層への給与を低くせざるを得ないため、年齢給のない外資系企業に優秀な若手社員を取られてしまうという事態も深刻です。
最近では「一橋大から香港科技大に若手研究職が転職」したことも話題になりました。民間企業では「中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の日本での初任給が40万円以上だと話題」になったこともありました。
表向きは終身雇用制を謳っている日本企業では、新入社員の給与が低くなりがちで、10年後、20年後に見返りを受けることができるようになっているのが特徴です。ですが、終身雇用制が保証されていないため、10年後や20年後には会社そのものがなくなっている可能性も高いのが現実です。
一方、同一労働同一賃金の考え方が基本の外資系企業では、将来の高給や高待遇が約束されておらず、業績や実績次第でいつでもクビになる不安定さはあるものの、勤続年数に関係ない職務給が提示できるという利点があります(というより世界ではこれが標準です)。
雇用の不安定さを受け入れるだけでこの待遇とあれば、大いに魅力を感じるという若者が増えているのだと思います。
さて、こういった話題が出るたびに常に問題にさらされる終身雇用制度、今では形骸化していることは誰の目にも明らかですが、一向になくなる気配を見せることがありません。それなら、終身雇用制度にはなくしてはいけないほどのメリットがあるのでしょうか?
今回は現時点では崩壊している終身雇用制度のメリットとデメリットについて考えます。
この記事をご覧の方には「仕事なんて所詮は金もうけの手段にすぎないということを忘れてはいけない」も参考になります。
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終身雇用の原型は戦前に作られていた
終身雇用制度が本格的に普及したのは戦後からとされていますが、その原型は戦前に作られていたと考える説が有力なようです。
Japan’s Wartime and Postwar Periods Recordedというサイトで終身雇用制度がいつからあるのかについて解説がされています。
終身雇用は戦後に広まった価値観
以外に思うかもしれませんが、戦前の日本では欧米型の雇用(≒職務雇用)が基本で、職人や従業員は少しでもいい条件の職場に気軽に転職するような社会でした。
現在の雇用問題でも指摘されているように、被雇用者の流動性が高いことは、労働者の待遇改善や給与の適正化に大いに効果のあることです。
労働者の流動性が高くなると、自然と条件のいい会社に労働者が集まるようになります。
雇用の流動性が高いことによるメリット
もし、無理して労働者を集めていた会社が潰れてしまっても、労働者は次の職場にすぐ転職することもできます。
こうなると、会社としての成長は維持しつつ、従業員に魅力的である条件を提示しなければ会社は生き残れなくなります。こうして自然と労働者の待遇はよくなっていくのです。
関連記事「新卒一括採用の弊害と日本の雇用制度の歪みについて」
不安定な社会では終身雇用制に効果があることも
平時であれば、基本的に欧米型の雇用(≒職務雇用)の方がメリットが大きくなります。
今の日本で労使問題が深刻なのは、雇用の流動性がとにかく低いからで、ここさえ解決できれば自然と労働環境も給与形態も最適化されていくはずです。
戦時中は終身雇用にメリットがあった
ですが、戦時中のような特殊な環境では労働者の流動性が高いことがデメリットになることもあります。戦時中は戦闘員としての人員需要が出てきます。熟練工が赤紙で招集されてしまうと、工場にとっては深刻な問題となります。
このような状況では技術者や熟練工の引き抜きが加熱してしまい、産業の維持や安定には深刻な問題を起こしてしまうこともあります。このため、国が労働者の雇用に関して規制、統制を行うことになったようです。
リーマンショックでも失業者を増やしにくかった終身雇用制
また、雇用の流動性が高いことは会社の業績が悪くなったら即座に解雇されてしまうという失職のリスクも高くなります。
最近でも記憶に新しいリーマンショックで自動車関連の企業が大打撃を受けたことがありますが、この時にそれほど失業者が社会に溢れなかったのは、終身雇用を前提とした雇用関係にあったことに気付いている方は少ないかもしれません。
雇用の流動性が高い社会だと、業績が悪くなるとすぐに解雇される危険が高まります。さらに、この条件に不況が重なると、あぶれてしまった労働者の受け皿がなくなってしまうため、一気に労働者の不安が高まります。
余裕がなくなると違法行為や脱法行為が増えてくるので、治安も悪くなってしまうことが多くあるのも見逃せません。
終身雇用の始まりは旧松下電器から
戦前も世界的な恐慌に見舞われたのですが、BIZHINTの記事によると、終身雇用の始まりはパナソニック(旧松下電器)の創業者である松下幸之助にあるとされています。
「一時的に苦しくなっても社員をクビにすることはない」という方針は、労働者の雇用不安の払拭に大きな役割を果たしました。終身雇用制にはデメリットだけではなくメリットもあるのです。
戦後の日本の大躍進を支えたのは終身雇用制度だった?
終身雇用制のデメリットとして、若手の給与が従事する労務から考えて安くなってしまう点や、雇用の流動性が失われる点、優秀な社員もできの悪い社員も同じ給与になるのでモチベーションの低下が起こりやすい点など、様々な点が挙げられますがメリットもあります。
戦後の高度経済成長を支えた終身雇用
終身雇用制のメリットとして、雇用を失う危険がなくなるので従業員と雇用主の信頼関係を構築することが容易です。また、業績に囚われない労働者の長期的な育成も可能になります。
戦後の高度経済成長を支えたものに、終身雇用を挙げる方も多くいます。雇用の流動性が低くなりますが、様々な業界に優秀な人材が確保されるので、全分野での成長が期待できます。
また、5年先、10年先を見据えた長期的な成長戦略を描くことができ、一時の景気や情勢に左右されない従業員の育成が可能となります。
さらに、戦争で優秀な技術者や熟練工が多く失われてしまったため、一から従業員を教育する必要があったことも終身雇用制に効果が出た原因となるでしょう。
世界中で日本型終身雇用が絶賛されていたことも
日本が戦後世界的から絶賛されるスピードで復興したのも、終身雇用制度があったからと言えます。今では信じられないかもしれませんが、日本の経済状況がいい時には、世界中で日本型の終身雇用制度が絶賛されていた時期もあったのです。
関連記事「【就活生向け】大企業と中小企業で働くメリットとデメリットについて」
変化が早く大きくなった時代に終身雇用は不向き
戦中・戦後の日本の発展のために、終身雇用制度は機能的に動いてくれていました。
ですが、変化が激しくなり、変化のスピードも速くなってしまっている現代では、終身雇用制度のデメリットばかりが目立つようになってしまっています。
雇用の流動性が下がると転職しづらくなる
終身雇用制度のデメリットは雇用の流動性が失われることです。
雇用の流動性が低いと、企業の募集も少なくなるので、転職するのが難しくなります。
結果労働環境が悪くても転職できない労働者が増えてしまい、過労死などに繋がることも多々あります。
優秀な社員ほどモチベーションが下がりやすい
また、新卒一括での採用を行い、その従業員を一から教育していく段階で、優秀な人と無能な人はどうしても出てきてしまいます。
終身雇用制度では優秀な人も無能な人も同じ条件で働くので、結果として全体の成果は高く出てきますが、特に優秀な人のモチベーションが下がりやすくなってしまいます。
日本の労働者が格安で雇えると喜ぶ外資系企業も
外資系企業からは日本の労働者は格安で雇用できるし成果も高いと人気があるようです。
また、雇用の流動性が低いため世界的な自身の給与相場を知らないことも多く、海外の企業と比べて格安の労働条件に甘んじてしまうことも多いようです。
終身雇用制度は以前は役に立ったシステムなのでしょうが、運用はもう限界になっていると考えた方がよさそうです。
雇用の流動性が低い社会では不正が起こりやすい
ここ最近、一部上場企業で行われる不正をニュースなどの媒体でよく目にするようになりました。
東芝の不正会計問題
未だに解決の糸口すら見えない東芝の不正会計問題。
電通の長時間労働
過労死について多くの人が考えるきっかけになった電通の若手女性社員の自殺。
日産の不正検査問題
検査そのものの是非について議論の余地があるとはいえ、やってはいけないことをやってしまっていた日産の不正検査問題。
神戸製鋼の検査データ改ざん
建造物などに利用されていた場合取り返しがつかないことにもなりかねない神戸製鋼の検査データ改ざん。
今年発覚したものだけでも枚挙に暇がありません。
ただ、これらの問題の根本的な原因は1つしかないことに気付いている方はいるでしょうか。
全ての問題の原因は終身雇用による雇用流動性の低下
多くの上場企業で行われる不正の根本的な原因は、終身雇用を前提とした就業システムでは労働市場が固定化されるため、企業間の移動はもちろん、異業種間の移動も起こりにくいからです。
労働市場の流動性が担保されている状況であれば、不正をしようとした企業から即座に転職することが可能となります。
海外ではいきなりクビになるリスクはあれど、労働市場が流動的であり再就職先の選択肢も多いため、組織ぐるみの不正が行われにくいようになっています。
解雇規制の撤廃が根本的解決策だが…
終身雇用を前提とした就業システムの思わぬデメリットといったところでしょう。
改善策は単純明快で、「労働市場の流動性を上げること」だけです。
そのためには、現状の労働法から解雇規制を撤廃するのが最も手っ取り早いのですが、あと10年ほどは大きく動くことがなさそうです。
若年層のみなさんは、就職先を選ぶ際に転職がしやすい業界であるかどうかも調べておくといいでしょう。
関連記事「労働集約型の企業にいる限り給与が上がらない理由」
労働市場の流動性を高めることは社会貢献に繋がる
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私が会社員のメリットを十分に理解しながら、最終的には独立という選択肢を採ったのも、仕事と報酬について考えた結果、独立した方が得であると判断したからです。
「会社の大きさ≠収入の多さ」になった
昔は、仕事をするならある程度の規模の組織であることの方が有利でした。
なので、多少損であっても会社員として働いた方が結果として得でした。
ですが、今では組織の大小が必ずしも成果に直結しなくなってきています。
会社組織の運営や、そのあり方について、もう一度よく考えなければいけない時代になっているのかもしれません。
より不確実な社会になった
一生同じ会社で働くつもりの人も、将来独立しようと考えている人も、転職や起業という選択肢を全く無視することはできない時代です。
もしかしたら会社が倒産してしまうかもしれませんし、ある日突然リストラされることになるかもしれません。
どんなにその会社が好きであっても、転職や独立の可能性を視野に入れながら行動するクレバーさが求められています。
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この記事をご覧の方には「35歳までに2回の転職をおすすめする理由」も参考になります。