ここ最近、妻が妊娠したのをきっかけに、子育てに関係する書籍を読み漁っていました。
様々な書籍が子育ての重要性やハウツーを述べている中、一つの書籍が目に入ったのを覚えています。
現代の親は、一つの価値観に縛られ、疲弊しています。
それが「子育て神話」といわれる、親の子育てが子どもの才能を伸ばし、よりよい人格を作り、社会に適合した人材にするという一種の幻想です。
友人や知り合いにも子育てを始める年齢になっていますが、一部の友人や知り合いは子育ての最中に余裕がないと感じますし、街中で出くわす親も余裕がない人が増えていると感じます。
思うに、みなさんは「子育て」を万能な神のように捉えていて、その神からのプレッシャーにより余裕がなくなっているのだと思います。
「親の子育てが子どもの将来を決定づけるわけではない」という学術論文が発表されていることは、ほとんどの方は知らないでしょう。
この事実が広まると、多くの育児本の著者や研究者にとって都合が悪い結果となります。そのため、マスメディア等でもほとんど紹介されることはありません。
ですが、人は原始時代から子育てを行ってきました。それは必ずしも望ましいものではなかったかもしれませんが、それでも子どもが育ってきたことは事実です。
ほとんどの親は認めたがらないでしょうが、子どもは親を見て育つわけではありません。ましてや、親の教育により地域社会に受け入れられるようになるわけでもありません。
ただ、同年代の友人たちとの関係性により成長するのです。
親にできることは、子育てを楽しむことであり、“正しい”子育てをしようと努力することではありません。
この事実が、子育てに悩んでいる一人でも多くの方に、広まることを願っています。
この記事をご覧の方には「新生児が生まれてから1歳になるまでの成長記録」も参考になります。
心理学者は親が強い影響力を持つとことをいまだに証明できていない
“尾木ママ”などは卒倒しそうですが、数多くの心理学者たちが総力を挙げて研究してもなお、「子どもに対して親が強い影響力を持つ」という確固たる証拠は出てきていません。
むしろ、様々な研究結果を総合すると、「親の影響力はほとんどない」事実が浮き彫りになってきます。
親が子どもに与える影響は家庭内に留まる
教育熱心な親御さんに知ってもらいたいのは、親が子どもに与える影響は家庭内に留まるということです。
そもそも、子どもは親の言うことを聞くようには作られておらず、子どもが普段親に見せている姿は家庭内に限定された姿です。
子どもが幼稚園や学校に行こうと玄関を出たその瞬間、家庭内の姿は制服と同じように脱ぎ去られるものなのです。
例として、兄や姉の方が我慢強く、弟や妹の方が野心的だ、と考えられがちです。しかし、幼稚園や学校では、必ずしも兄や姉が上の子らしく、また、弟や妹が下の子らしく振舞うとは限りません。
上の子らしさや下の子らしさは、家庭内に限定された話なのです。
移民の子どもはなぜネイティブと同様の外国語を習得するのか?
親が影響を与えない証拠の一つに、移民の子どもが親よりも苦労せず、移住先の外国語を身につけることが挙げられます。
移住してきた親はいつまでたっても現地の言葉を覚えられないのに、連れてきた子どもは苦も無く現地の子どもたちと遊び、間もなく親の発音の間違いを指摘して笑うようになるでしょう。
実は、子どもが言語を習得することですら、親の役割はほとんどないのです。
幼少期に親が話しかけることで言語の習得は早まりますが、仮に全く親が話しかけなくても、いずれ言語能力は追いつきます。
これは、両親が聾唖であっても、子どもの言語能力に障害がなければ、問題なく言語を習得することからも明らかです。
親がいないことよりも同年代の仲間がいないことの方が重要
人間に近い哺乳類としてサルやチンパンジーが挙げられます。これらの動物を観察することは、人間をより深く知るために大変役立つことが知られています。
さて、サルの子どもを対象に、親・同年代の仲間がいる場合といない場合で、どのように発達に差が出るかを研究したことがありました。
その結果、親も仲間もいないサルの異常行動はもちろん目立ちましたが、次に異常な行動を多くしたのは親がいても仲間のいないサルでした。
さらに驚くべきことに、親はいないが仲間はいるサルの子どもは、親も仲間もいるサルの子どもと、ほぼ同じ様な発達をし、異常行動もほとんど目立たなかったそうです。
サルの異常行動の多さ
親も仲間もいない>親はいるが仲間がいない>親はいないが仲間はいる≒親も仲間もいる
このことから、親よりも同年代の仲間がいるかどうかの方が、子どもの発達により大きな影響を与えていることが分かります。
同じような例として、イギリスの上流階級で、子どもが生まれたらすぐに乳母にやり、小学校から全寮制の学校に行かせ、両親とほとんど顔を合わせることもなかった子どもが、立派なイギリス紳士に育つという事例もあります。
双子研究で分かった家庭環境の無関係さ
親の教育がどれだけ子どもの成長に影響を及ぼすかは、幼い頃生き別れとなってしまった一卵性双生児を調査するのが最も効果的です。
もうお分かりだと思いますが、ほぼ全ての実験で、同じ家庭内で育った一卵性双生児と、生き別れとなった一卵性双生児は、大人になってからの性格がほぼ同じで、見た目、学力、趣味嗜好などにも、目立った違いが見られなかったのです。
一卵性双生児は、同じ家庭で育てられても、違う家庭で育てられても、同じように成長するという事例は枚挙にいとまがありません。
書籍内では、「二人のジム」の話をはじめ、実際の事例がいくつか挙げられています。
これらの事例で挙げられていることは、生き別れになった双子が必ずしも同一の教育を受けていないということです。
この事実は、家庭環境が子どもの発達に、さほど影響を与えていないという示唆になるでしょう。
子育ては親⇒子だけでなく、子⇒親にも影響している
一卵性双生児が違う家庭で育っても、同じように成長する事実から、子育てが必ずしも親から子への一方通行ではなく、子から親への働きかけも強いことが考えられます。
いい教育を受けたから立派に育ったのではなく、子どもが立派だったからいい教育を受けたのかもしれません。
愛されたから優しい子に育ったのではなく、優しい子だから愛されたのかもしれません。
これまでに行われた多くの実験で、親の育てられ方による子どもの変化はほぼ皆無で、遺伝による変異しか確認できないそうです。
また、子どもの器量・不器量(不細工かどうか)が親の子どもへの態度にかなり影響すると研究で明らかになっています。
子どもは同世代の仲間と一緒に成長する
前述のサルの実験で分かったことに、親がいないことよりも同世代の仲間がいないことの方が、発達に大きな影響を与えることが研究で明らかになっています。
では、子どもが学ぶ対象が親ではないとしたら、誰から学んでいるのでしょうか。
これは同世代の仲間、特に同世代の同性の仲間となります。
例えば、好き嫌いを直すために、親がどれだけ言葉を尽くして説明するより、同世代の友達に協力してもらう方が楽に結果が出るでしょう。
ピーマンが嫌いな子どもがいたら、ピーマンが好きな子どもと一緒に食事をさせるだけで、十分な効果が得られるはずです。
子どもたちは他のこどもたちと一緒にいることを強く望む
3歳~4歳程度の子どもであれば、幼稚園や保育園に行くことを拒む子どももいるでしょう。ですが、それは最初だけで、何度も通ううちに慣れてきます。
また、子どもが小学校に通うようになれば、家に帰ってくるのはご飯を食べる時と寝る時ぐらいで、それ以外は外で仲間と一緒にいることを強く望むようになるでしょう。
また、幼児は見知らぬ大人は警戒しますが、見知らぬ子どもを警戒することはありません。むしろ、積極的に近づいていくことでしょう。
子どもは同年代の仲間を通じて社会化を果たす
子どもは同年代の仲間を通じて社会化を果たします。子どもは仲間を通じて、自らをカテゴリー化し、それにふさわしい行動を取るようになるのです。
カテゴリーの例としては、男の子、○○学校の〇年〇組、○○クラブのメンバーなどです。
これらのカテゴリーにおいて、現状最も顕著(サリエント)なものは何かを瞬時に判断し、適した行動を取ります。
これは子どもだけでなく大人も同様で、家の中と外では顔が違うといった例えでも使われます。
さて、仲間内のカテゴリーを気にするようになった子どもは、カテゴリーにふさわしい行動を次々にとります。
優等生グループに入った子はより学習に精を出し、不良グループに入った子はより問題行動を起こします。
ただ、ここで覚えておいてほしいのは、仲間を選ぶのはあくまでも子どもであり、自分と似たグループに進んで所属するということです。
つまり、優等生グループに入ったから頭が良くなるという側面もありますが、そもそも優等生グループに入ったのは頭が良かったからです。もちろん、逆も然りです。
仲間内での地位が最終的な性格に影響を及ぼす
さて、教育において親の影響はほとんどないという学術的な証拠をいくつも紹介しましたが、仲間内での地位が最終的な性格に影響を及ぼす点には、十分注意した方がいいかもしれません。
一般的に、4月~6月生まれの子どもは発育がよく、早生まれ(1月~3月)の子どもは発育が悪くなりがちです。
子どもが集団を形成する過程で、体の大きい子がリーダー的役割を果たすことは多く、集団内での地位が高くなりがちです。
いじめられっ子よりいじめっ子の方が社会的に成功を収めやすいのも、仲間うちでの地位が最終的な性格形成に影響を与えることが大きいと考えられます。
これらの事実を知ったところで、親にできることはほとんどありませんが、学校が荒れているかどうかなど、住む地域を真剣に検討することは、きっと子どものためになるでしょう。
子育ては、子どもの一生にさほど大きな影響を与えることはありません。天才は天才として生まれてきますし、起業家は起業家として生まれてきます。
友人から、「子どもは神様から預かっていると考えて育てている」と聞いたことがあります。まさにその通りで、私たちにできることは、子どもの成長を見守り、その中で起こる様々なことを一緒に楽しむことです。
この記事をご覧の方には「妊活をすると分かる流産の可能性の高さ|夫ができる心構えは?」も参考になります。