今ではそう珍しくないかもしれませんが、私が小学生だった20数年前は男子でピアノが弾ける子というのはそれなりに珍しい存在でした。大体学年で2~3人程度だったと思います。
そこそこピアノができる代わりに歌が苦手だった私は、合唱コンクールなどで伴奏をやったりもしていました。
伴奏の担当になる前に、どの程度ピアノが弾けるか先生に知ってもらうため、その時練習していた曲を弾いたりもしていました。このような経緯もあったので、友人にもピアノの弾ける男子として認識されていたようです。
ある日、友人から「楽譜を見ないで弾ける(暗譜ができる)なんて頭が良いんだね~」なんて言われたこともあります。
「頭が良い」なんて言われて悪い気はしなかったので、「そんなことないよ~(もっと褒めてくれ)」ぐらいに対応していましたが、実はこの台詞には多分に誤解が含まれています。
恐らく、ピアノを弾いたことがない方やピアノが弾けない方は、私のようにピアノが弾ける人間を、PDFのように楽譜を覚えていて、ピアノを弾いている際にその画像を頭の中で描きながらそれを見て弾いているというような理解の仕方をしているのでしょう。
しかし、現実は全く違います。
例えばですが、サッカーやバスケットボールなどのスポーツで見られる、予め想定された状況で予め決められた動きをする「セットプレイ」というものがあります。
(サッカーならコーナーキック、バスケットボールならゾーンプレスなどでしょうか…)
暗譜をしている曲もほぼこれと同じようなもので、体が決まった動きを覚えるまで練習しただけのことで、少なくとも私は楽譜を覚えているわけでは全くありません。
ゲームで例えるなら「レベルを上げて物理で殴れば勝てる」という状態です。
サガフロ2の悪名高きラスボスのエッグのように、状態異常攻撃をしてくる敵にはレベルを上げただけでは勝てませんが(再走するはめになりました…)、FFシリーズのラスボス程度ならこの対策で十分クリアできてしまうぐらいです。
前置きが長くなりましたが、実は“暗譜”は練習さえすれば誰でも“いつかは”できるようになるものです。既に言いたいことはほぼ言い終えてしまいましたが、今回は暗譜についてお伝えします。
この記事をご覧の方には「【1日15分】ハノンを繰り返し弾くことでピアノの基礎力を上げることができる」もおすすめです。
私の場合は特にそうで、暗譜している曲は楽譜を覚えているのではなく、ピアノを弾く一連の流れを単に体が覚えているだけのことです。
なので、「この曲のここから弾いてよ♪」なんて軽く言われると正直狼狽してしまいます。
練習で覚えている曲はイントロ→Aメロ→サビ→Bメロ…のように流れをセットで覚えているので、任意の場所から(サビなど)弾くのは非常に難しいのです。
他の方が暗譜している曲をどのように認識しているのかは私の知るところではありません。
ただ、ほとんどの方は体が曲を弾く時の動きを覚えているだけではないかと思います。なので、一曲まるまる弾くという状況でないと難しいのではないかと思います。
かなり練習をやり込んだ曲であれば、途中からなどの対応もできます。
ただ、ピアノの発表会などでよくある、「間違えて止まってしまった場所から再開できない」という現象は一連の流れでしか曲を覚えていないことの証左だと考えています。
身も蓋もない話ですみませんが、曲を暗譜して弾けるようになるにはひたすら練習する以外の方法を私は知りません。
体が曲を弾く動きを覚えて考えることなく反応するようになるまで弾き込むだけなのです。
それでもちょっとしたコツをお伝えするなら、両手だけの練習をするのではなく、片手ずつでも通しで練習しておくことでしょう。
片手で一曲通しで練習することは、両手で弾けるようになってからはあまりやらない人もいるでしょう。
ですが、片手での曲の流れを、両手で弾けるようになってしばらくしてから確認すると、曲に対する新しい発見があったりもします。
曲への理解を深めるためにも片手での通し練習はたまにやっておいた方がいいでしょう。
なお、右手だけ、左手だけで暗譜するまで練習する必要はありません。
あくまでも曲の理解を助けるためや、リズムを間違って覚えてしまっていたことの見直しで片手での通し練習は位置づけておいた方がいいです。暗譜はあくまでも両手のみで弾ければいいのです。
みなさんは「のだめカンタービレ」というマンガをご存知でしょうか?
この漫画は一時期ドラマにもなって大ヒットした作品です。
この作品はクラシックを知らない一般の方からの人気も高かったのですが、私をはじめクラシックに詳しい人たちからも支持を集めました。
かなり詳しく取材をしていて、音楽の世界をよりリアルに描いていたことが理由だと思います。
さて、このマンガは“のだめ(野田恵)”という女性と“チアキ(千秋真一)”という男性のダブル主人公制を採っています。
クラシック界、私の知る限りで最低でもピアノ界隈ではこの“のだめ”派と“チアキ”派が10年~20年周期で行き来すると聞いています。
“のだめ”のスタイルは「楽譜はあくまで目安だから自分なりに解釈して自由に弾こう」というものです。一方“チアキ”は「楽譜に書かれている通りに演奏することが大前提」というスタイルです。
両者正反対のスタイルにも思えますが、これはその時代に活躍するプロの傾向でどちらのスタイルが流行っているか分かると私のピアノの先生が言っていました。(私はよく分かりません)
今はどうか知りませんが、20年ほど前は時代は“チアキ”派だったようで、少し“のだめ”派に移行しているような時でもあったようです。
私がピアノを始めて間もない頃(約20年前)は、発表会は暗譜をしていることが大前提でした。
ですが、高校生ぐらいになると発表会でも楽譜を置いていいような雰囲気になっていたようです。
これはいわゆる“ゆとり”とはちょっと違うようで、“チアキ”派から“のだめ”派への移行期間のようなものだったのではないかと思っています。
ちなみに、私のピアノの演奏スタイルは多分に“チアキ”派ですが、単にアドリブが苦手なので“のだめ”のようには演奏できないだけで、楽譜だけが頼りだったのかなと思っています。
楽譜の内容は覚えていて当然と考える“チアキ”派とあくまでも成果物である演奏を重視する“のだめ”派、今はどちらの派閥が優勢なのでしょうか。
この記事をご覧の方には「【基礎練習】ピアノの基礎練習や上達方法について分かりやすく解説」も参考になります。
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